共産主義者同盟(統一委員会)






■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

■ENGLISH

■リンク

 

□ホームに戻る

   

     ■『戦旗』1609号5面


   
 コロナ禍で見えてきたもの
   介護労働の現場から  
               
川野 圭子



 新型コロナウイルス感染拡大の影響は二年間に及び、現在も収束は見通せない状況です。
 見えないウイルスに対する恐怖、社会的孤立、失業と貧困、行政による支援の不足などを背景に経済格差、貧困格差は急激に広がっています。
 新自由主義的価値観にさらされてきた日本社会は、「自己責任」と「自助」が強要され、医療が届かぬまま自宅療養を強いられ、昨年夏には二五〇人に及ぶ在宅死亡が確認されました。
 「第六波」を迎えた現在、自宅療養者が四三万人(二二年二月三日)をこえました。高齢者や子どもの感染が急増しており、生活困難に対応すべき社会保障制度の脆弱性が一層浮き彫りになっています。
 なかでも女性の生活困窮者が急増しています。非正規雇用が多いこともあり、二〇年度の国税庁統計では年収二〇〇万円以下の女性の比率は38・6%となっており、一七歳以下の子どもの相対的貧困率は七人に一人で、OECD加盟国の中で最低水準です。

●ケアワーカーに正当な評価を

 コロナ禍で医療、介護、福祉施設などの現場における人員不足は深刻となり、岸田政権は昨年「全世代型社会保障構築会議」を設置し、看護、介護、保育、障害福祉分野で働く人の賃金を3%程度上げると表明しました。看護師については新型コロナウイルスに対応する医療機関で働く人のみが対象となっており、二二年二月から1%程度(月四〇〇〇円)、一〇月から3%引き上げることになりましたが、その財源をどうするのかはまだ未定です。障害福祉施設等で働く人の賃金は月平均二九万五千円、介護職では二九万一〇〇〇円程度で、全産業平均の三五万五〇〇〇円を大きく下回っています。また、これらの賃金は夜勤手当、残業手当も含まれた額です。3%賃上げされても、全産業平均とは程遠い額です。ケアワーカーは、歴史的に女性が多く、賃金、労働条件などが低く抑えられてきた背景があります。
 また、医療現場のひっ迫が叫ばれる中、岸田政権は、二〇二三年度以降は医師養成数を削減する方針を打ち出し、「地域医療構想」にもとづく二〇万床の急性期ベッド数削減を推進する法律は撤回していません。
 わたしが働く介護事業所でも男性職員は一割にも満たず、また常勤職員は四割弱で、あとは非正規の女性たちがパッチワークのように小刻みに三六五日、二四時間働いてい  ます。シングルマザーで働く職員も1割ほどおり、夜勤もあり、また賃金も低いため、みな親元で同居しています。
 当事業所は、入所施設ではなく、通いの施設です。本人の年金収入だけでは介護施設に入所させられず、自宅で介護せざるを得ない高齢者が複数います。介護者の妻も高齢で、がん末期や透析、酸素吸入が必要な人を一人で介護するのは困難なために 自宅では寝るだけにして、三六五日毎日通っている人もいます。ほとんどの利用者が重い基礎疾患を持っているので、わたしたち介護者も、ひとたびコロナ感染が始まれば、死者、重症者を出すことが予想されるので、命と隣り合わせのなかで日々緊張感を持って介護しています。
 厳しい状況で働くケアワーカーに対する3%の賃上げは、あまりにも小ぶりすぎて、歴史的、構造的な待遇の低さを改善するものとは言い難いものです。岸田政権がやるべきことは基本報酬を引き上げて、女性たちが安心してはたらくことができる職場環境を作るために努力することです。エッセンシャルワーカーなどと賛美して終わるのではなく、すべてのケアワーカーの処遇改善に取り組むことが急務だと思います。




 


Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.